Ethernetに代わる選択肢─既設配線を活用する次世代IP通信技術「Nessum」とは?

IP化の波と、見落とされがちな選択肢
集合住宅向けインターホンやビルオートメーションの分野では、ビデオインターホンやHVAC機器、センサーなどのIP化が急速に進んでいます。これらの機器を相互に接続しIPネットワークを構築することで、リモートメンテナンスやクラウド連携が可能となり、システムの利便性・安全性・拡張性が飛躍的に高まります。
この潮流の中で、多くの技術者や経営層がまず始めに検討するのは、有線であればEthernetや、Single Pair Ethernet (SPE)の一つである10BASE-T1L、無線であればWi-Fiなどの既によく知られている技術の活用でしょう。しかし、これらの技術は通信用の新規配線が必要となることや、環境により無線の電波が届きにくくなることといった課題を内在しています。
そこで注目したいのが、もう一つの選択肢である次世代通信技術Nessumです。
Ethernetで直面する壁と、現場のリアルな悩み
HMSネットワーク社の調査によると、産業用ネットワークにおける新規接続ノードの71%がEthernetで接続されています(フィールドバスが22%、無線が7%)。このように、Ethernetは広く普及しており、対応機器が豊富にあることも事実です。しかし、レガシーかつ非IPの通信ネットワークが残る既設のビル・集合住宅にEthernetを導入するには、以下に示すような乗り越えるべき課題が存在します。
- 新規配線の工事にかかる費用
- 工事に必要な人材の確保
- 集合住宅の居住者やオフィスを使用している企業/労働者への影響 等
これらの課題に対処するためには、再配線を必要とせず、短工期・低コストでネットワークを構築可能な、コスト効率の良いソリューションが必要です。
Nessumとは?既設配線を活かすIP通信技術
Nessumは、既設の配線をそのまま活用し、長距離・広範囲なネットワークを構築可能な次世代の通信技術です。ツイストペア線、同軸線、電力線などのさまざまな線を、線種を問わずに通信用の線へアップグレードが可能であり、配線の形態にも限定されないトポロジーフリーな技術として、低コストでのネットワーク構築に貢献できます。L2スイッチの機能が備わっているため、IPとシームレスな統合が可能です。
伝送速度は、伝送距離数kmで数Mbps~数十Mbpsを可能とし、Masterあたり最大1024台のデバイス接続とマルチホップによる自動中継技術で大規模ネットワークを構築可能です。さらには、強固な耐ノイズ性能と帯域幅の柔軟な変更により、ロバストな通信を実現しています。
Ethernetおよび10BASE-T1Lとの違いについて詳細に知りたい方は、こちらの記事を参照、もしくは以下より比較表をダウンロードしてください。
Nessumを活用したIPネットワークの構築例
既設の2線ケーブルとNessumを使ってIPネットワークを構築する場合、次の2つの方法が考えられます。
- Nessum組み込みデバイスを対象機器に搭載(Nessum対応製品の開発)
- Nessumアダプターを対象機器に接続(保有するEthernet対応製品の活用)
ここでは、IP化のニーズが高まっている集合住宅向けインターホンシステムを例として紹介します。


組み込みデバイスを機器に搭載する場合、配線工事は不要で、機器の設置についてもアナログ通信の機器をNessum対応の機器に置き換えるだけの簡単なものとなります。
既にEthernet対応の製品を持っている場合には、EthernetとNessumの変換アダプターを機器に接続する方法も選択肢となります。この場合は、既設の配線をそのまま活用しEthernet対応製品を設置できるメリットがある一方、アダプターを設置するスペースや電源の供給については考慮が必要です。
既設配線を活用した短工期・低コストでのネットワーク構築事例
ここで、既設の配線を活用できるメリットが、ネットワーク構築の工期とコストに与える影響について、その一例をご紹介します。
日本の学生寮では、インターネット環境の整備にNessumを活用しました。当初、Ethernetによる環境構築を検討していましたが、Nessum技術で既設の電力線を通信回線にアップデートしたことにより、60%のコスト削減と85%の工期短縮を実現しました。
詳細については、以下より資料をダウンロードしてください。
既にEthernetを導入していてもNessumを重視すべき理由
既にEthernetベースの製品を開発または販売している場合、Nessumは必ずしも競合ではなく、補完し得る技術です。これまで述べてきたように、Nessumが特に強みを発揮するのは、既設のビル・集合住宅において通信ネットワークを非IPからIPへアップグレードする場合になります。
例えば、新規配線が可能な場合はEthernetを使用し、既存のインフラを維持する必要がある場合はNessumを使用するといったハイブリッド戦略も有効でしょう。このようなアプローチにより市場リーチが拡大し、これまで諦めていた環境においてもIPソリューションを提供できるようになります。
Ethernetに代わる見逃せない選択肢―Nessum
Nessumは、既設の配線をそのまま活用できる次世代IP通信技術として、新規配線が困難な環境においても、柔軟かつ低コストでのネットワーク構築を可能にします。設置の環境によりEthernetまたは10BASE-T1Lと補完し合うことで、製品やサービスの提供範囲を広げる有力な選択肢となるでしょう。
今後のIP化ニーズに応える技術として、Nessumの活用をぜひご検討ください。